六通と全通
「つの出し」は、全通の帯や丸帯で結びます。
しかし現在では、芸妓などの帯結びを除けば、袋帯で結ぶのが一般的です。
現代の袋帯といえば、「六通の袋帯」です。この帯の特徴は、帯の六割の部分にしか柄が入っていない袋帯の事です。
それまでの袋帯は、全ての部分に柄のある「全通の袋帯」でした。
ところが、戦後のベビーブームで生まれた子供たちが、成人・結婚の時期を迎えると、需要が増えて、帯の生産が追い付きませんでした。
そこで考案されたのが、一回目に巻く部分を、柄のない無地にして生産コストを下げ、需要に対応したのです。六通の袋帯の誕生です。(手先に柄、全体の4割の無地を挟んで残された部分が柄を占めています。)
全通の帯による粋なつの出しへ
しかし「六通の袋帯」の難点は、「つの出し」を結ぶと無地が表に出てきて、「粋なつの出し」などは表現できないことです。
私はよく踊り手の方に、「高価な正絹の豪華な六通より、粋に結べる安価な全通にしませんか。」とお伝えしています。
江戸、明治、大正期の古典舞踊には、やっぱり時代に合った「全通の帯による粋なつの出し」を結びたいものです。
六通では、私たち独自の「モドキつの出し」しか出来ませんから…
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